線と地の実験が生み出す豊かな画面
法貴信也の《Untitled》
作品としては抽象絵画なのですが、作家自身は線やストロークを丹念に追究し続けている画家だと言えるでしょう。法貴信也の絵には具体的なイメージや画家の感情、情緒的な心象風景のようなものはほとんど映し出されません。
紙の上で何百本もの線を練習して描き、それをキャンバスでの実践に生かしていきます。色彩はほぼ青、紫、茶、緑の4のみが使われています。手の運動の繰り返しによる身体性、限られた色の絵具を用いて表現されるにもかかわらず、非常に豊かで複雑な画面は、何度眺めても飽きないと思います。
(Taka Ishii Gallery/石井孝之)

2023年/キャンバスに油彩/65.3×50.1cm
©Nobuya Hoki. Courtesy of Taka Ishii Gallery / Photo:Kenji Takahashi