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〈ゴールデングース〉のモノづくりの原点がここに宿る。ヴェネツィアの巨大で稀有な“クリエイティブハブ”「HAUS」

イタリア・ヴェネツィアで誕生したブランド〈ゴールデングース〉が、2023年に創設した「HAUS(ハウス)」。この1万平方メートルを超える正体不明な空間では、世界で活躍するクリエイターたちが集い、多彩なイベントや展示が行われている。

text: Megumi Takahashi

“使い込まれた”ディティールが存在感を放つ、〈ゴールデングース〉のスニーカー

〈ゴールデングース〉を知っているだろうか。イタリアはヴェネツィア生まれのブランドで、ひしゃげた星のマークの付いた、“新品なのに使い込まれたようなラグジュアリースニーカー”で知られる。イタリアやアメリカでは、このヴィンテージ感あふれるレザーのスニーカーが「ファッション好きのクローゼットに一足は備わっている」と言えるほど定番のアイテムになっている。

〈ゴールデングース〉の定番、Super Starモデルのベーシックカラー
〈ゴールデングース〉の定番、Super Starモデルのベーシックカラー。

2000年にヴェネツィア出身のカップル、アレッサンドロ・ガッロとフランチェスカ・リナルドが立ち上げた〈ゴールデングース〉。創立当初は「自分たちが着たいものを作る」というコンセプトのもと、ヴェネツィア周辺の職人工房で思いのままにハンドメイドした製品を展開していた。ヴィンテージ感を醸し出しながらも、レザーやシルエットが上質でディテールにこだわったライダースジャケットは、今も変わらず人気を集めている。

2007年に誕生し、現在もなおブランドの不動のアイコンとなっている特徴あるスニーカーは、ラグジュアリースニーカーの先駆けともなった。二人がLAを旅行中に見かけたスケートボーダーたちのすり減ったスニーカーに魅了されたことが、その誕生のきっかけ。〈ゴールデングース〉にとって「使い込まれている」ことは、そのアイテムがそれぞれの時を経て生きてきたことを示す。ヴェネツィアのレザー靴工房の職人と「ヴィンテージをどう表現するか」を真剣に話し合いながらプロダクトを作り上げていく。

職人が手仕事で作るスニーカーはそれぞれ異なり、すべてが一点もの。〈ゴールデングース〉のCEO、シルヴィオ・カンパラは「かつてラグジュアリーは『価格が高い』ということに比重があったが、今は『希少なもの』へニーズが移り変わった。そのひとつしかないモノに欲望を感じると同時に、人々はその邂逅に感動し、愛情を注ぐ」と説明する。

シューレースやアッパーへのカスタマイズを行うこともできる〈ゴールデングース〉のスニーカーは、その欲望を満たす上でも、この上ないプロダクトだ。創業者が実践したように「自分が思い描くスタイルに合ったものを着る」ことには主体性があり、個々人それぞれがクリエイティブでもあるということ。クラシコ・イタリアーノのスーツをテーラーメードするのとはまた異なる、ファッションへの自由で主体的アプローチという一石を、トレンド至上主義の世の中に投じたといえる。

ブランド発祥の地「ハウス」が巨大なクリエイティブハブに

創業者は、オフィスを「心地よく仕事ができる家(ハウス)のようなスペースにしよう」と、ヴェネツィアの工業地帯マルゲラ港の巨大な倉庫の中に自宅兼オフィスの一軒家を建て、そこでヒット商品の数々を生み出してきた。

このブランドが誕生した地で、2023年に創設されたのが「HAUS(ハウス)」という新たな拠点だ。1万平方メートル以上に広がる「HAUS」では、〈ゴールデングース〉が“Dreamers(ドリーマーズ)”と呼ぶ「夢を追いかける者たち」を巻き込んだイベントや展示が行われる。多彩な分野から、異なるバッググラウンドを持つクリエイターたちが集い、クラフツマンシップ、カルチャー、アートが融合する巨大な“クリエイティブハブ”として機能する。

ヴェネツィアの工業地帯マルゲラ港「HAUS」
ヴェネツィアの工業地帯マルゲラ港に建てられた「HAUS」。現在はイベント開催などに合わせて、限られたタイミングでのみ一般公開を行っている。

そして、去る5月7日。「ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展2025」の幕開けに際し、世界各地からのゲストを迎えて、「アートへの没入体験」と「クラフツマンシップ」にフォーカスしたイベントが開催された。

催眠的ビジュアルとサウンドに没入するアート体験

催眠的なビデオコラージュ「FLASHBACK(フラッシュバック)」
今回のイベントで展示された作品。1970年代の広告のサブリミナルメッセージにインスピレーションを得た催眠的なビデオコラージュ「FLASHBACK(フラッシュバック)」。

「HAUS」では2024年からヴェネツィア・ビエンナーレの開催に合わせてゲストアーティストを1名招聘して、建物を自由自在に使った大規模な個展を行っている。今年はイタリア人アーティストのマルコ・ブランビッラに「HAUS」の鍵を託し、〈パレ・ド・トーキョー〉の共同創設者で革新的なキュレーターとして知られるジェローム・サンスのキュレーションで、個展「Altered States(変容した状態)」展を開催した。

ジェローム・サンス(左)とアーティストのマルコ・ブランビッラ
「Altered States (変容した状態)」展のキュレーションを手掛けたジェローム・サンス(左)とアーティストのマルコ・ブランビッラ。

マルコ・ブランビッラは、ビデオインスタレーション、バーチャルリアリティ、デジタルコラージュなど、幅広い映像やデジタルメディアを横断しながら、テクノロジーの視点で文化的スペクタクルを再構築。密度の高い、幻想的なランドスケープを生み出してきた。

今回の個展では、「映画=夢の状態」として捉え、「HAUS」の工業的な空間を、現実と仮想が溶け合う流動的な空間へと変容させるインスタレーション作品を展示した。

映画の映像とサウンドを基に制作された作品群は、夢の世界(映画)と集合的無意識をつないでいる。催眠的なビジュアルやサウンドスケープによって、鑑賞者は記憶、ファンタジー、欲望が交錯する多層的な世界を体感することになる。

例えば、メイン広場のインスタレーション「OVATION」は、映画の観客の表情にクローズアップ。スクリーンいっぱいに感情豊かな観客を映し出すループフィルムを見続けていると、あふれる感情の波に飲み込まれてしまいそうになる。

大展示スぺース「ハンガー」では、巨大スクリーンにビデオコラージュ「天国の門」が上映された。万華鏡のように、ハリウッドの黄金時代のシーンや人が次々と生まれては消えていく。ハリウッドの夢と過剰さを描きながら、物語を語る集合意識を称賛すると同時に、その飽和した魅力を風刺している。

「HAUS」で育まれる、次世代の創造性とクラフツマンシップ

〈ゴールデングース〉には手仕事やクラフツマンシップの精神が根付き、「唯一無二のアイテムを、心を込めて手作りして愛し、それと共に生きていく」という創業当時から変わらない姿勢を大切にする。この「HAUS」内には、その精神を支え、継続していくためのさまざまな施設と仕組みも設けられている。

Tシャツにシルクスクリーンでプリントするドリームメイカー(職人)たち
「ACADEMY(アカデミー)」で、Tシャツにシルクスクリーンでプリントするドリームメイカー(職人)たち。ここで、感性豊かな職人たちが育成される。

次世代の職人“Dream Maker(ドリームメイカー)”を育成するための「アカデミー」では、靴づくりやテーラリング、シルクスクリーンプリント、DJ、パブリックスピーキングなど、職人技から現代的な文化活動まで、多彩な分野のコースやセミナーを用意。

HAUS内のスペース「マノヴィア」
「MANOVIA(マノヴィア)」では、製品のイノベーションやリペアを行っている。愛するアイテムを長く使うために、リペアは欠かせない。

小さな工場のようなスペース「マノヴィア」では、製品のイノベーションやリペアを行う。サーキュラーエコノミー(循環経済)の考え方の普及とともに、アイテムを大切に長く使うという考えが広がっているが、ここにはその実践を支える体制が整っている。

そして今夏、東京・銀座に「HAUS」のコンセプトを引き継いだショップ〈HAUS TOKYO〉がオープン予定だ。“没入体験型”の空間としてアパレルショップとしての枠組みを超え、創造性とクラフツマンシップを発信しながら、グローバルなアートコミュニティのハブとしての機能も備えるという。地下にDJブースもある、4フロアにわたる大型店になる計画だ。

アートに刺激を受け、ドリームメイカーたちと話し合いながら、自分だけのピースを作り上げる。そして一点もののアイテムを愛し、リペアしながら、一生使い続ける。そんな稀有な体験ができる「HAUS」に訪れてみてほしい。