本当に現実に起こりそう、そう思えてしまう飛躍の物語
SF小説と呼ばれる作品に初めて触れたのは、実は2020年くらい。話題の『三体』を読んで、こんなに面白い小説があるんだ!と驚いたんです。子供の頃から宇宙にはなんとなく興味があって。『宇宙を織りなすもの』という物理学の本を読んだときに、時間と空間の正体やまだ証明されていないことの多さに引き込まれました。
光が1年かかって到達する距離は「1光年」と言ったりしますが、そもそも光が時間や距離の単位になっているのがすごいなって。光の速度は一定だけど、それ以外に宇宙には謎がたくさんある。そのわからなさにSF的な設定を受け入れる余地があるんです。
『三体』を読んだあとに『時間封鎖』などのハードSFも、友人に薦められて読みました。小説は視覚的な要素がないからこそ、文章だけで想像力を膨らませられるのが面白い。特に私は、フィクションだとわかって読んでいても、いつか本当に起こりそうだと思えてしまう作品が好きです。現実世界では瞬間移動は絶対できないけど、SFには「もしかしたらできるかも?」と信じてしまう不思議な力があるんですよね。
橋本絵莉子が選ぶSF3作品
『時間封鎖』
著:ロバート・チャールズ・ウィルスン/訳:茂木健(たけし)/2008年邦訳発表/黒い膜に包まれた地球。時間の流れ方が変わり滅亡の危機に瀕した地球人による火星移住計画が始まる。「物語を進める2つの時系列のつじつまが合う最後の二、三十ページが衝撃」
『新世界より』
著:貴志祐介/2008年発表/1000年後の日本。大人になるために「呪力」を手に入れなければならない子供たちは、一見のどかに見える学校で徹底的に管理されていた。「主人公が読者と同じ目線で物語の世界を解きほぐしてくれて、臨場感に満ちています」
『オデッセイ』
監督:リドリー・スコット/2015年公開/2035年を舞台に、火星に一人取り残された宇宙飛行士が生き延びようとする姿を描く。「宇宙が舞台だと誰かと誰かが戦う映画が多いイメージだけど、これはとても現実味がある宇宙での生活が描かれていました」
